オンライン講演会「新型コロナ:ドイツの現状と今後のゆくえ」の講演まとめを公開しました

外務省からの支援による事業「チームオレンジ・ドイツ~コロナに負けない安心の老後のために」の一環で11月21日(日)に開催されたオンライン講演会「新型コロナ:ドイツの現状と今後のゆくえ」から早や2週間。新規の変異株オミクロンが登場し、ドイツでは全国的な2Gルールが適用されるなど、この2週間の間にも大きな変化が次々とありました。

あくまでも現時点でわかっていること、という注釈付きですが、今の状況を正しく理解していただくため、講師の馬場恒春先生と森由紀子先生のご了承をいただいて、講演の内容をまとめました。以下より閲覧、あるいはダウンロードいただけます。

講演『新型コロナのこれだけは知っておこう』(講師:馬場恒春先生)
講演『ポスト(ウィズ)コロナの感染症予防』講師:森由紀子先生)

 

去る12月10日、連邦議会と連邦参議院は、施設を対象とした新型コロナワクチンの接種義務を可能にする連邦感染防止法の改正を可決した。対象となるのは以下の施設の従事者(正規被雇用者以外には事務職、受付、清掃などサービス、派遣職員、フリーランサー、ボランティアも含む)である。対象となる者は2022年の3月1日までには2回目の接種を終え、遅くとも3月15日までには雇用者に対し、接種証明の提示をしなければならない。
対象となるのは:病院、リハビリ施設、介護施設、高齢者施設、障がい者施設、デイクリニック、訪問介護サービス、訪問集中介護サービス、医院、歯科医院など治療が行われる医院、外来手術センター、透析施設、出産施設、保健所、救急サービス など
従業員が接種証明を提示できない場合、雇用者は管轄の保健局への通告義務がある。尚、これらの施設の利用者、入居者、患者や訪問者は対象外である。

出典:https://www.pflegen-online.de/10-haeufige-fragen-zur-impfpflicht?utm_source=pflegebrief_newsletter&utm_medium=newsletter&utm_content=10%20h%E4ufige%20Fragen%20zur%20Impfpflicht&utm_campaign=nl_pfb_21_12_14

2021年12月8日水曜日からベルリン州ではコロナの新規感染拡大を防止すべく、イベントやプライベートの面での制限が強化される。クリスマスマーケットではこれまでの2G(接種者か恢復者のみ許可)に加え、マスクの着用が義務付けられるようになった。プライベートの集まりでは、ワクチン接種者と恢復者以外が参加する場合、同一世帯以外の最大2名に限定される(全員が接種済み、あるいは恢復者であれば、人数制限はなし)。また、公共交通機関は3Gルールを導入しているが、水曜日からは車内のみならず、地下鉄やSバーンのホームでも適用となり、コントロールが始まる。他にはクラブやディスコでのダンス禁止、役所など公共の建物での3Gルールの導入(これまでは職員に限定)、屋外スポーツでの3Gルールの導入など、ベルリン州はこれで、連邦政府と各州との合意をほぼすべて実施したことになる。
(参考:https://www.rbb24.de/politik/thema/corona/beitraege/2021/12/berlin-schaerfere-regeln-in-kraft-ungeimpfte-weihnachtsmaerkte-c.html

 

12月2日,メルケル首相と連邦各州首相による協議が行われ、ドイツ全土における2Gルールの拡大、ワクチン未接種者に対する接触制限、大規模イベントの人数制限等について合意された。ワクチン接種については、病院や介護施設従事者への義務づけがまもなく導入される他、2022年2月を目途に一般市民への義務づけも検討されている。各州で有効な防疫措置については在ドイツ日本国大使館のサイトから。

 

新型コロナワクチン接種者がウィルスを広め、または自身で感染して重症化することもある。しかし、ベルリンにあるフンボルト大学の研究調査によれば、その可能性は非接種者のそれに比べるとはるかに少ない。同研究[rocs.hu-berlin.de] は、2021年10月11日~11月7日の期間、ロバート=コッホ=研究所が把握した陽性で症状のある接種者と未接種者のデータを分析した。ワクチンの有効性が72%という数値をベースに、1)未接種者が未接種者を感染、2)未接種者が接種者を感染、3)接種者が接種者を感染、4)接種者が未接種者を感染 するという4種の感染路を解析したところ、未接種者は76%も感染を引き起こしており、内、半数以上は未接種者が未接種者を感染している。(下図)

感染の約4分の1は接種者によるものであるが、接種者が接種者を感染する割合はその内わずか9%であった。

新型コロナウィルスのワクチン接種は本人の感染防止のためと思われがちであるが、接種することがいかに他者の感染予防につながるかを新たに明らかにした調査である。筆頭研究者のベン・マイヤー氏(物理学、モデラ―)によれば、接種者と未接種者を分けることが疫学上ウィルスの蔓延防止に有効とされても、そのような防疫措置がどのような社会的緊迫をもたらすかの試算はできない上、新規の変異株オミクロンにもこの数理がどこまで当てはまるかも、現時点ではわからないという。

出典:Ungeimpfte sind wohl an acht von zehn Infektionen beteiligt (rbb24ニュース)

詳細はフンボルト大学の研究発表から。

 

 

ドイツ小売業連盟(HDE)は12月2日~4日の3日間、全国45か所のショッピングセンターにて、ブースター接種の実施を行うと発表した。買い物客を対象にした接種キャンペーンはこれまでにもスーパーマーケットの駐車場やショッピングセンター内で行われており、敢えて医者に行ってまで接種をする気がない、迷っている、接種できるかかりつけの医者がいないといった人を中心に、これまで25万本の接種を実現してきた。
第四波の新型コロナの感染拡大に歯止めがきかずロックダウンが討議される中、小売業連盟独自のキャンペーン「Leben statt Lockdown」 (ロックダウンではなく生活を)の一環での3日間のブースター接種提供は、コロナパンデミックで継続して損害を被り、クリスマス前のロックダウンをどうしても避けたいという小売業者の切実な声を反映する。参加するショッピングセンターのリストはこちらから。尚、ブースター接種ではなく、第一回、二回目の接種も可能である。

参考:https://www.leben-statt-lockdown.de/

 

 

11月18日、メルケル首相と連邦各州首相による協議の結果、ドイツ全国一律の包括的な新たな措置が合意されました(3段階の各連邦州の入院率に応じた制限措置、ブースター接種を含むワクチン接種のさらなる促進等)。制限措置の基準となる入院率とは、過去7日間の人口10万人あたりの新規入院者数で、この数値が3以上、6以上、9以上になるかで2Gプラス、2G、あるいは3Gか区別される。州の間の格差は、最小値のニーダーザクセン州(2.70)からチューリンゲン州(18.58)と非常に大きい(11月24日時点)。詳細は在ドイツ日本国大使館が常に更新する「ドイツ国内の防疫措置(行動制限)」のサイト、及び「各州の防疫措置」をご覧ください。

出典:https://www.bundesregierung.de/breg-de/suche/corona-mpk-1980850

外務省からの支援による事業「チームオレンジ・ドイツ~コロナに負けない安心の老後のために」の一環で11月21日(日)、オンライン講演会「新型コロナ:ドイツの現状と今後のゆくえ」が開催されました。11月に入ってドイツ全国で新規感染者が増加しているというタイミングもあり、370名が参加されました。JAMSNETドイツの代表の馬場恒春先生と、同じく内科医の森由紀子先生の講演は好評で、その内容の濃さが期待以上であったという感想を多くいただきました。中でもブースター接種と呼ばれる再接種、12歳以下の子どもの接種、ワクチンの副作用に関する関心は高く、50件以上の質問が集まりました。講演の内容は12月に入ってから、当サイトに公開しますので、どうぞお楽しみに。

それまで待てない方は、ドイツ連邦健康相Spahnのライブトークに参加をされてはいかがでしょうか。次回は11月27日14時で、テーマはブースター接種です。詳細はこちらから。

新型コロナウィルスによる新規感染の7日間指数をみると、現在の第四波で感染率が一番高いのは5歳から14歳の学童(小中学生)である。この年齢グループでは夏休みが終了してから、新規感染者数が増加している。これは、学校で行われる週2~3回の迅速検査によって、無症状の感染者が他の年齢グループよりも発見されやすいこと。加えて、接種を受けてない12歳以下の児童は日常、互いに身体接触を持つことが多いのが、その原因とされる。尚、この傾向は春の第三波にも見られたことである。ベルリンの日刊紙 Morgenpost は年齢グループ毎の7日間指数を時系列でグラフ化し、州別の数値の表示も可能にしている。

接種常任委員会STIKOは11月18日、RNAメッセンジャーワクチン接種者の第三回目の接種推奨対象者を18歳以上に拡大した。但し、70歳以上の者、介護施設や医療機関従事者で利用者に接触する職種の者、高齢者施設・介護施設入所者、免疫不全者は優先されるべきであること。同時に未接種者の一回目の接種も早急に行われるべきであることを強調する。第2回目の接種との間隔は6か月置くべきでるが、個々の必要性やワクチンのキャパシティ次第では期間短縮も可能とする。その前のワクチンが何であっても、再接種はRNAメッセンジャーワクチン(BionTechかModerna)でなければならない。

同時に、妊婦も妊娠初期を過ぎた第2トリメスター(13週~)からは接種を受けることがすすめられている。

出典:https://www.rki.de/DE/Content/Kommissionen/STIKO/Empfehlungen/PM_2021-11-18.html

ベルリン州健康省の発表によれば、BionTechやModernaのワクチン接種者は2回目の接種後5か月経過していれば、3回目の接種が受けられるようになった(Johnson&Johnson接種者は4週間後)。接種常任委員会(STIKO)は70歳以上の者、介護施設や医療機関の従事者、高齢者施設の入所者など限定したグループの接種をすすめていたが、11月18日の発表で18歳以上の者全員への接種勧告に方針を変えた。

ベルリンでは既に今週から二つの接種センター(Messeと Flughafen Tegel)が3回目の接種者で混雑し、長蛇の列ができている。ホームドクターでの接種も可能ではあるが、当初の3000の開業医の内、1000人しか新型コロナウィルスのワクチン接種を行っていないため、接種センターでの接種は今後も増える見込みである。予約なしでも接種は受けられるが、長時間の待ち時間を避けるためには、予約をしておく方がよいとのこと。接種センターの予約はこちらから。(注:予約状況をカレンダーで確認できるが、例えばBionTechでの再接種は11月19日現在で一か月待ち状態)尚、予約なしの待ち時間状況は、このサイト(中央の信号)で確認できる。
それ以外には、ベルリンの各地で、州のワクチン接種キャンペーンの一環として以下の移動接種ステーション(バス)が一時間に20名まで、予約なしの接種を行っている。日程と場所はhttps://wirhelfenberlin.de/で常に更新されている。滞在資格やドイツの健康保険がなくても、接種そのものは可能である。但し、デジタル接種証明の発行のためには何らかの身分証明を持参すること。

 

 

新型コロナウィルスのワクチン接種を推進すべく10月半ば、Bürgertest(市民検査)とよばれるコロナ抗原迅速検査が有料化されていた。ドイツ連邦健康省は、ワクチン接種を受けていても有効性を発揮するまでに時間がかかるため、ワクチン接種をこれまで通りに推進しながらも、感染拡大防止のための市民検査の無料再導入を決定した。全国の検査所は州ごとにこちらから検索できる。