ドイツで国家認知症戦略が正式にスタート

ドイツでは、認知症患者が現在 160 万人、2050 年までに 280 万人に増すと予測されています。この 数字を前に、まず、7 月 1 日に内閣によって国家認知症戦略決議され、認知症週間の 9 月 23 日、 連邦家族省、連邦健康省、連邦学術省の三大臣と 57 の協力団体が調印して公式にスタートしました。 認知症の人とその家族を社会全体で支えていくことが狙いです。
同戦略では以下の4つの行動領域において、27 の目標が 162 の施策に具体化されています。
• 認知症の人の住み慣れた生活環境における認知症の人の社会参加の体制確立
• 認知症家族の支援
• 認知症の人のための医療体制と介護サービスの向上
• 認知症の研究促進

それぞれの行動領域で、ドイツ語を母語としない移住者の文化や言 語を配慮したサービスの整備が求められています。また、通常の診断は ドイツ語やドイツ文化で育った人を想定した方法であると、今後はさまざまな言語や文化背景を診断に反映させるべきであると記されています。 一般にはあまり知られていませんが、これに先立って、ドイツ政府は2012 年から Lokale Allianz für Menschen mit Demenz と称したプログラムで、認知症の人の地域における支援ネットワークを助成してきています。デーヤック友の会も、 2015 年秋から 2 年間、この助成を受け、ドイツ各地での認知症サポーター養成講座や講演会を開いて 来ました。

一方、日本では、2004 年に「痴呆」という言葉が「認知症」に取って代わり、「認知症を知り地域をつくる 10 ヵ年」(2005 年)、「オレンジプラン」(2013 年)を経て、政府の認知症施策推進総合戦略とされ る「新オレンジプラン」が でき、2015 年(2017 年と2019年に改訂)に公表されました。
実はこの新オレンジプラン、日本での周知度は国民の一割にも至らないとか。それでも日本に滞在したこと のある人は、マスコミや自治体の認知症への活発な取り組みに気づかれたのではないでしょうか。認知症に 対する啓発や教育は政府や当事者団体のみならず、あらゆる機関から発信されているのです。
ドイツに住む私たちは、インターネットや認知症サポーター養成講座を通じ、日本語で最新の情報を取得 できるという恵まれた環境にあります。しかし、ご自身や家族が認知症になった場合、ドイツの医療や介護は 不可欠になります。また、ドイツ語を話す家族にも、認知症に関する正しい知識をもってもらうことが大事 です。

  • Demenz-Partner 講習(独版「認知症サポーター養成講座」)独アルツハイマー協会主催
    https://www.demenz-partner.de/startseite.html
  • 認知症用語の手引き 「Sprachleitfaden Demenz 」
    不適切な用語を使うことで、無意識に認知症の人や家族を傷つけたり、差別したりしてしまうことがあり ます。また、私たち外国人は、語彙不足から適切でない表現を使ってしまうことにもなりかねません。この 冊子(アルツハイマー協会刊行)で、ドイツ語でも認知症に関して適切な表現を知ることができます。https://www.deutsche-alzheimer.de/fileadmin/alz/broschueren/Sprachleitfaden-Demenz-INTERNET.pdf

ベルリン在住会員の福澤啓臣氏が、ドイツの新型コロナウィルス対策のこれまでの経緯や社会への変容についてまとめ、「ドイツは新コロナにどう対処しているか」というタイトルで『現在の理論』(デジタル版)2020夏号に発表されました。3月半ばのロックダウンから約4か月半が経ちました。収束の目途が立たないままに日常生活がほぼ復帰していますが、本稿はこれまでの施策を振り返りながら、継続する非常事態を改めて認識させてくれるものです。

目次
1.ドイツの新型コロナ危機の経緯
2.連邦制とロックダウン解除
3.連邦予算と新型コロナ救済金
4.これまでの救済措置網から漏れた人々への追加対応
5.経済の回復は旧型復帰か、新型模索か
6.社会および学校のデジタル化
7.グローバル化とEUの将来
8.デモと集会禁止
9.ウイルス学者と追跡アプリとPCR検査と抗体テスト
10.「市民社会」と国家のリバイバル
11.夏休みと秋の通常授業再開
12.クラスターの続発
13.秋の日常生活への復帰はいかに?

DeJaK友の会では、外出制限の期間に限定し、家族や知人友人によるサポートが十分にない方を対象に以下のボランティアサービスを提供しています。すべて無償で、会員でなくても利用可能です。ご関心のある方は、それぞれの州の担当者にご連絡ください。

ベルリン州

  • 散歩同伴(外で待ち合わせをし、2メートルの間隔を厳守しながらの散歩同伴です。シャルロッテンブルク宮殿横の河畔など、お近くにお住まいのボランティアを紹介します。)
  • 電話による話し相手(5分でも10分でも近況を話したり情報交換したりすることで、日本語によるストレス発散にご利用ください。お電話番号とご希望の時間帯をご指定いただければ、こちらから電話をします。)
  • 買い出し(外出ができず、手伝ってくれる人がいないという方に限定して、お買い物の代行をします。*)
  • (需要があれば)デジタルサロン(Zoomというビデオミーティングのシステムを使えば、ネット上で簡単にサロンを開くことができます。そのためにはカメラ付きのパソコン、タブレット、あるいはスマホが必要です。スカイプ、LINEやFacebookのにようにアカウントは必要ありません。ご関心のある方はご連絡ください。)

*ベルリン・ブランデンブルク交通公社VBBでは病気や障がいにより単独での外出ができない人対象の(無料)同伴サービスをこれまでも提供していましたが、今週より、その外出同伴サービスが「用事代行サービス」に変わりました。外出を避けるために、お買い物に限らず、処方箋を医院に取りに行くといった用事を代行してくれます。詳しくはこちらをご覧ください。
尚、当会による買い出しサービスはこのため、VBBには頼めないような特殊な食材(米、豆腐など)に限定させていただきますので、ご了承ください。

お問い合わせは:シュペネマン望(メール:spennemann@dejak-tomonokai.de、電話:017 3-217 5058)まで

ノルトライン=ヴェストファーレン州

  • 電話による話し相手(5分でも10分でも近況を話したり情報交換したりすることで、日本語によるストレス発散にご利用ください。お電話番号とご希望の時間帯をご指定いただければ、こちらから電話をします。地元に近い方のほうが話が通じそうと思われたら、デュッセルドルフ(西)、ミュンスター方面(北)、ボン/ケルン(南)、ルール地方(中央)で活動する会員にご紹介もできます。)
  • デジタルサロン(Zoomというビデオミーティングのシステムを使えば、ネット上で簡単にサロンを開くことができます。そのためにはカメラ付きのパソコン、タブレット、あるいはスマホが必要です。スカイプ、LINEやFacebookのにようにアカウントは必要ありません。ご関心のある方はご連絡ください。)

お問い合わせは:花田久美子(hanada@dejak-tomonokai.de)まで

ヘッセン州

  • 電話による話し相手(5分でも10分でも近況を話したり情報交換したりすることで、日本語によるストレス発散にご利用ください。お電話番号とご希望の時間帯をご指定いただければ、こちらから電話をします。)
  • デジタルサロン(Zoomというビデオミーティングのシステムを使えば、ネット上で簡単にサロンを開くことができます。そのためにはカメラ付きのパソコン、タブレット、あるいはスマホが必要です。スカイプ、LINEやFacebookのにようにアカウントは必要ありません。ご関心のある方はご連絡ください。)

お問い合わせは:江井久実子(enei@dejak-tomonokai.de)、札谷緑(satsutani@dejak-tomonokai.de)まで

バーデン=ヴュルテムベルク州

  • 電話による話し相手(5分でも10分でも近況を話したり情報交換したりすることで、日本語によるストレス発散にご利用ください。お電話番号とご希望の時間帯をご指定いただければ、こちらから電話をします。)
  • デジタルサロン(Zoomというビデオミーティングのシステムを使えば、ネット上で簡単にサロンを開くことができます。そのためにはカメラ付きのパソコン、タブレット、あるいはスマホが必要です。スカイプ、LINEやFacebookのにようにアカウントは必要ありません。ご関心のある方はご連絡ください。)

お問い合わせは:橋詰いづみ(bw@dejak-tomonokai.de)まで

バイエルン州

  • 電話による話し相手(日々の暮らしの事、お買物情報(ミュンヘンでは日本食料品店からの宅配が可能)や健康について、相続関係の事、ご家族の認知症の症状についての悩み事、日常生活支援ボランティアやミュンヘンで受けられる講座のこと、お知り合いの高齢の方についてのご相談、耳寄り情報などをお気軽に電話で話しませんか。お電話番号とご希望の時間帯をご指定いただければ、こちらから電話をします。)

お問い合わせは:衣川-クリュースピース富士子 (bayern@dejak-tomonokai.de)まで

全国

  • お住まいの州にデーヤックの活動拠点がない方、ご家族の介護に関する悩みがある方、お近くで支援をお探しの方には、お電話(0173-2175058、土日も可)かメール(mail@dejak-tomonokai.de)にてご相談に応じます。

その他の支援

  • 日本人助産師によるメール相談:新型コロナ感染拡大により全国で移動が厳しく制限される中、友達との面会も制限され、異文化の地で言葉の壁から専門家に相談できなかったり悩みを抱える妊婦の方、小さなお子さんのいらっしゃる方を対象に、日本人助産師さん(ヘッセン州在住)がメールで相談に応じます。ご利用ください。
  • ドイツ全国に広まる地域の支え合い(Nachbarschaftshilfe):高齢や基礎疾患がある、あるいは感染の疑いがあって自宅待機中のために外出できない方を対象に、買い物に行ったり、犬の散歩を引き受けたりする地域ベースのボランティアの輪がドイツ中で広がっています。WirgegenCorona*ではオンライン、あるいは無料ホットライン0800 08 200 20でボランティアを頼むことができます。nebenan.deQuarantäne Helden*は登録後、お住まいの近くのドイツ語によるボランティアを紹介してもらえるシステムです。利用はすべて無料です。

*外部リンクにつながります。

緊急カード(Notfallkarte)をお持ちでしょうか。事故や急病で救急搬送されることになった時に、救急隊員が傷病者本人の情報を得るためのものです。普段は健康な方でも、いつどこで倒れたり、けがをするかわかりません。倒れた時、自分で話ができないかもしれませんし、周りに自分のことを知っている人がいるとは限りません。そんな時、緊急連絡先やかかりつけ医等の情報を記載した緊急カードを携帯しておけば、適切な処置につなげることができます。デーヤック友の会ではこの度、名刺サイズの緊急カードを作成し、無料で配布しています。記入例も詳しく説明したカードを、ぜひご利用ください。画像でのダウンロードはこちらから(外側ページ内側ページ)。

 

お問い合わせはこちらからどうぞ。

 

デュッセルドルフ市には、市の提供する認知症支援サービスを外国人にも利用しやすいようにするため、その橋渡し役を養成するプロジェクト「Brücken bauen – kultursensibel helfen」があります。このような試みはドイツ全国でも唯一とのことです。

この養成講座を会員2名が受講し、今後、DeJaK-友の会としてこのプロジェクトに参加できることになりました。

講座では、さまざまな母語を持つ外国人団体の参加者が、どんな人がどんな場合に何の支援を受けられるか、どこに相談に行ったらいいのかを学びました。今後は自分の言語で、認知症当事者やその家族を案内し、 市のサービスへの橋渡しをします。

全7回の講座には、いろいろな文化背景を持つ人々が集まり、市のサービス担当者だけではなく参加者 同士も情報交換、交流をする貴重な機会となりました。国によっては、今でも認知症自体を恥じたり、家族 で面倒を見ないことも恥とされたり、また、病気を表すにも「忘れ病」のような言葉が今も使われているなど、 背景にその国の社会事情も透けて見えるようでした。

今後DeJaK-友の会でも認知症当事者やその家族などへの相談窓口を設置する予定です。何か不安がある時には、こちらに是非おいでください。デュッセルドルフ市にどのようなサービスがあるのか、どの役所に行ったらいいのかなどのご相談にのります。

定期相談窓口
原則として2月・4月・6月・8月・10月 の最終土曜日 10時から12時(事前にメールにてご確認ください。希望日程も可能です)

場所:Deutsches Rotes Kreutz, Kreisverband Düsseldorf e.V.
zentrum plus /DRK Derendorf-Nord(DeJaKの総会をした会場) Blumenthalstraße 2 (入り口はFrankenstr.), 40476 Düsseldorf
連絡先:花田(hanada@dejak-tomonokai.de

 

11月1日~30日までの間、ドイツ全国でドイツ心臓財団・Deutsche HerzstiftungによるHerzwoche(心臓週間)が始まります。今年のテーマは「危険な不整脈:心臓突然死を予防するには?」です。ドイツで年間6万5千人が心臓突然死によって亡くなっています。「突然死」というのは、発現から24時間以内で死亡することですが、その原因は心筋梗塞をはじめ、心不全、弁膜症などの心臓病が大半で、そのほとんどが心室で生じる致死的な不整脈に起因するといわれています。ドイツ心臓財団による1か月の啓発キャンペン期間中、ドイツ全国で一般向け講演会やセミナーが開かれ、心臓の専門家から直接、原因、診断、治療や予防についての話が聞けます。このページ下方に郵便番号を入力すれば、あなたのお近くのプログラムが検索できます。

日本語による関連情報は例えば、日本心臓財団のサイトをごらんください。

 

「デジタル遺品/Digitaler Nachlass」 という言葉を聞いたことはありませんか。生前整理の必要性がマスコミで盛んに取り上げられる日本では、デジタル遺品整理を専門とす る業者も数多く出てきました。デジタル遺品というのは、持ち主の死後、遺品となったパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に残されたデータやインターネット上の登録情報のことです。これらの個人情報は 故人がパスワード情報を残していなければ、遺族がデータ消去手続きをできないばかりか、友人知人の連絡先をスマホやパソコンなどのデジタル機器にしか保存して管理していない場合には、残された家族が知らせたい人に連絡を取ることすらできません。このため、自分の死後に個人データがどうなるべきか、生前から考えて行動しておくことが大事です。ドイツでは消費者センターが生前にしたためておく委任状Vollmachtをすすめています。詳しくは、10月発行のニュースレターをご覧ください(会員専用)。このような話題に加え、「医者への上手なかかり方」、各地の活動報告を満載しています。

 

(デュッセルドルフ)自分の心身の健康を守ることは、とても大切なことです。ドイツの医療は進んでいて、安心して任せられる、というイメージがありますが、ちょっと体調を崩して医療機関を訪れることになると、時として言葉のハードルだけではなく「日本ではこうだったのに?」と戸惑うことがあります。でも、実は日本とドイツの医療制度には、それぞれ納得の背景と理由があります。独日両方の医療に長く携わられてご経験の豊富な内科医、馬場恒春先生にお話ししていただきました。会場からも熱心な質問が相次ぎ、大変充実した2時間となりました。

 

日頃より、公益法人デーヤック友の会のホームページをご利用いただき、誠にありがとうございます。ホームページをリニューアルしましたので、お知らせ致します。

各地の活動がカレンダーで一目瞭然になりました。「地区紹介」では6つの州でそれぞれに、どのような活動が行われているか、ご覧いただけます。また、入会申込みもホームページから直接、指定のフォームを使って行えるようになりました。会員の方々には会員専用ページへアクセスしていただければ、ニュースレターのバックナンバーや過去の講演資料を読んでいただくことができます。

多くの方々に情報が伝わるよう、引き続き内容を充実して参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

デーヤック友の会役員一同

ベルリンでは今年4月より、第4金曜日の15時から17時まで「ふらっとサロン」を開いています。おかげさまで好評で、ドイツに来られたばかりのお若い方、在独歴40年以上のドイツベテランさんといろいろな方がご利用されています。日本語という共通項を通じ、年齢を超えて参加者の方々が互いに力づけているような、和気あいあいとした集まりです。話す日本語だけではなく、活字に飢えている方もいるかと、先月から日本書籍の文庫も開設しました。スペースの関係で新しい本の持ち込みは現在受け付けていませんが、読書が好きな方は、自由に本をお持ち帰りください。9月のサロンは27日の金曜日です。

去る8月14日、ドイツ連邦内閣は家族負担軽減法(正式名称は:Gesetz zur Entlastung unterhaltsverpflichteter Angehöriger in der Sozialhilfe und in der Eingliederungshilfe)の法案を可決しました。これまでは、介護費用の自己負担分を要介護者自身が支払えない場合、家族の年間純所得が39,000ユーロを上回っていれば、扶養義務があるとして、息子や娘が親の自己負担分を担わなければなりませんでした。介護の自己負担は施設介護の場合はドイツ平均で月1,600ユーロにもなり、子供にとってはそれが大きな経済的な負担となります。その結果、在宅で無理をして介護を受けたり、在宅での介護が十分でななくても、子の負担になることを恐れて、親が施設への入所を拒むという現象も起きていました。この法律が制定されれば、扶養家族の収入は10万ユーロまで引き上げられ、加えて、配偶者の収入は換算外となります。手続きも簡素化されることで、扶養家族にとっての負担の軽減は見込まれます。しかし、介護保険で賄われない自己負担分は市町村が社会扶助の一環で負担することとなり、自治体はこれまで以上に介護による財政圧迫を危ぶんでいます。詳細は連邦労働社会省のサイトへ。

デーヤック友の会が日本経済研究所の月報のコラム「ヨーロッパの街角から」の中で紹介されました。2019年5月号にて、「外国で迎える老後と介護 ー 文化の垣根を越えて ー 」というタイトルでカールスルーエ在住ジャーナリストの松田雅央氏が執筆されたものです。