2020年10月02日

ドイツでは、認知症患者が現在 160 万人、2050 年までに 280 万人に増すと予測されています。この 数字を前に、まず、7 月 1 日に内閣によって国家認知症戦略決議され、認知症週間の 9 月 23 日、 連邦家族省、連邦健康省、連邦学術省の三大臣と 57 の協力団体が調印して公式にスタートしました。 認知症の人とその家族を社会全体で支えていくことが狙いです。
同戦略では以下の4つの行動領域において、27 の目標が 162 の施策に具体化されています。
• 認知症の人の住み慣れた生活環境における認知症の人の社会参加の体制確立
• 認知症家族の支援
• 認知症の人のための医療体制と介護サービスの向上
• 認知症の研究促進

それぞれの行動領域で、ドイツ語を母語としない移住者の文化や言 語を配慮したサービスの整備が求められています。また、通常の診断は ドイツ語やドイツ文化で育った人を想定した方法であると、今後はさまざまな言語や文化背景を診断に反映させるべきであると記されています。 一般にはあまり知られていませんが、これに先立って、ドイツ政府は2012 年から Lokale Allianz für Menschen mit Demenz と称したプログラムで、認知症の人の地域における支援ネットワークを助成してきています。デーヤック友の会も、 2015 年秋から 2 年間、この助成を受け、ドイツ各地での認知症サポーター養成講座や講演会を開いて 来ました。

一方、日本では、2004 年に「痴呆」という言葉が「認知症」に取って代わり、「認知症を知り地域をつくる 10 ヵ年」(2005 年)、「オレンジプラン」(2013 年)を経て、政府の認知症施策推進総合戦略とされ る「新オレンジプラン」が でき、2015 年(2017 年と2019年に改訂)に公表されました。
実はこの新オレンジプラン、日本での周知度は国民の一割にも至らないとか。それでも日本に滞在したこと のある人は、マスコミや自治体の認知症への活発な取り組みに気づかれたのではないでしょうか。認知症に 対する啓発や教育は政府や当事者団体のみならず、あらゆる機関から発信されているのです。
ドイツに住む私たちは、インターネットや認知症サポーター養成講座を通じ、日本語で最新の情報を取得 できるという恵まれた環境にあります。しかし、ご自身や家族が認知症になった場合、ドイツの医療や介護は 不可欠になります。また、ドイツ語を話す家族にも、認知症に関する正しい知識をもってもらうことが大事 です。

  • Demenz-Partner 講習(独版「認知症サポーター養成講座」)独アルツハイマー協会主催
    https://www.demenz-partner.de/startseite.html
  • 認知症用語の手引き 「Sprachleitfaden Demenz 」
    不適切な用語を使うことで、無意識に認知症の人や家族を傷つけたり、差別したりしてしまうことがあり ます。また、私たち外国人は、語彙不足から適切でない表現を使ってしまうことにもなりかねません。この 冊子(アルツハイマー協会刊行)で、ドイツ語でも認知症に関して適切な表現を知ることができます。https://www.deutsche-alzheimer.de/fileadmin/alz/broschueren/Sprachleitfaden-Demenz-INTERNET.pdf

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