認知症への理解を深める

②認知症の診断方法

デーヤック友の会

認知症の原因となる病気は50以上あります。中でも一番多いのがアルツハイマー型認知症です。アルツハイマーや他の多くの認知症は、脳の神経細胞の変性が原因で一次性認知症とよばれ、今はまだ完治できせん。ほかに認知症の原因には、脳の損傷、うつ、脳の血管障害、過度のアルコール摂取やビタミン不足などがあります。これらが原因の認知症は、二次性認知症と呼ばれますが、早期治療によって完治する認知症もあります。

認知症には早期診断が大切です。治療可能な認知症があるからです。また、治療できない認知症でも早期に診断されれば、進行を遅らせることができるからです。認知症の診断ができるのは医師だけです。自己評価によっては確定できません。

記憶力に支障があると思ったら、まずはかかりつけの家庭医に相談しましょう。認知症の疑いがあるとされた場合、神経科、精神科、あるいはメモリークリニックと呼ばれる記憶障害の診断と治療を専門とする病院の外来に紹介されます。

診断には、「症状の診断」と「原因の診断」の二段階があります。

症状の診断

1)問診

医師が病歴、薬の服用、食習慣などの日常状況を聞きとり、心身の症状の原因を診察します。本人ではわからない変化について話せる家族の同行も大事です。

2)身体検査

身体検査では一般的な健康状態に加え、血液、血圧、脈、心肺機能、視力、聴力の検査をします。これにより、症状の原因となり得る他の疾患(甲状腺機能障害、心配疾患など)が除外されます。認知症の疑いがあるときは、神経科の検査が続きます。

3)認知力検査

何種類かの検査によって、記憶力、集中力、言語能力、問題解決能力が調べられ、認知症があるか、どこまで進行しているかがわかります。一般的な検査法は、Mini-Mental-Status-Test (MMST ミニ・メンタルステート検査)、時計描写テスト、Demenz-Detektions-Test (DemTect)の3つです。

認知症とうつを識別するために、TFDDという検査も行われます。

原因の診断

1)ラボ診断

血液や尿検査で、原因となり得る基礎疾患を排除します。

2)画像診断

CT、MRI では脳の萎縮、その部位や範囲、梗塞、出血、腫瘍などをみることができます。PET検査では、アルツハイマー型認知症の原因となる脳内のアミロイドβ蓄積の有無や程度を調べられます。つまり、発症する前のアルツハイマー病の早期診断が可能です。しかし、PET検査機器がまだ少ないこと、また高額という理由から、認知症の検査には通常使用されておらず、法的保険では保険の適用がありません。

3)髄液検査

髄液検査では、CTやMRIの画像にもまだでない早期の段階から、アルツハイマーの原因となるアンドロイドβやタウの蓄積がわかります。髄液検査はメモリークリニックや入院時の認知症検査には含まれ、最近は、専門医でもこの検査を提供するところが増えています。

この他、アルツハイマー型認知症の診断には、精度が高く、他の検査よりもコストが低いという血液検査の研究開発が進んでいます。ただし、ドイツではまだ治験段階で、臨床での認可はされていません。

ドイツに160あるメモリークリニックで診断を受けるには、家庭医の紹介が必要で、外来で2,3回に分けての検査となります。お近くのクリニックはこちらで検索できます。

https://www.alzheimer-forschung.de/alzheimer/diagnose/gedaechtnisambulanz/

(参考:https://www.alzheimer-forschung.de/alzheimer/broschueren-downloads/diagnoseverfahren

デーヤック友の会は10年前に「認知症サポーター養成講座」を、そして、3年前には「チームオレンジ」を導入し、ドイツの日本人社会一般で認知症への理解を深めると同時に、当事者を早期支援につなげる取り組みを行ってきました。それでも、「認知症かも」と思っても周囲に相談できないといった声に代表されるように、まだまだ当事者の方々が暮らしやすい社会では決してありません。認知症=大変な介護、認知症=問題行動といったイメージを持つ人は多く、どうしてもネガティブに考えられがちです。本コーナーでは、認知症の当事者本人の声をできるだけ取り上げながら、認知症への正しい理解を深めていくことを目指します。