2024年10月20日

ドイツに暮らすアジア系シニアが、気軽に立ち寄り、母語での交流を楽しむことができる“居場所づくり”を目的に、昨秋ベルリンでスタートした集い「茶Cha」。約1年の試行期間を経て、この9月12日に、正式オープニングイベントが開催されました。

会場であるシャルロッテンブルクの地区センターDIVANには、80人近い参加者が集まり、広々とした多目的スペースが満員となる盛会ぶり。複数のアジア系コミュニティが共催するシニアの集いは、ドイツの行政からも注目を受け、ベルリン州の次官をはじめ、「多文化共生」問題の専門家たちが、来賓として名を連ねました。日本国大使館城戸領事にもご参加いただき、なごやかな雰囲気の中、祝辞のリレーが行われました。

 「同じ母語を話す人同士集まって、自分の経験や悩みを語り合える”セーフ・スペース”の存在はとても重要です。言葉も来し方も違う3つの国のコミュニティが、難しい歴史的体験がありながらも、こうして共に集い、交流し合っているのは、大変意義深いこと。ベルリンの数多のコミュニティにとって明るい兆しといえる試みです!」(ベルリン州政府「統合・反差別・多様性」担当次官ランデロ氏)

「孤立と孤独が世界共通の問題となる中、このように人が集う場所があるのは、大変心強いことです。日本の高齢者を支援するために始まった催しが、国籍や文化を超えた集まりに大きく発展したのは、デーヤック友の会の日々の活動と努力の賜物。感謝と敬意を表するとともに、「茶Cha」が、すべての高齢者にとって憩いの場となり、孤独に悩む方が少しでもなくなることを祈ります」(在ドイツ日本国大使館 城戸領事)

スピーチに続いては、アンサンブルMe-Oto(ピアノ小宮尚子氏、ホルン平田稔氏)による二重奏と、韓国人(元)看護師コーラスHeRo-Chorの演奏が行われました。「アリラン」の合唱では、指揮を務める牧師さんにリードされ、皆が(ゲストの方々も!)手を取り合い、リフレインに合わせて腕を揺らして、宴会のようなムードに。そこ此処に笑顔が溢れ、会場が一体となった瞬間でした。

演奏の後は、ティータイムとなり、久しぶりに会う人々や、初めて会った人同士、美味しいものをつまみながら、会話の輪が広がります。デーヤックほか、ボランティア・チームの協力で、ビュッフェには、お団子やあんパン、韓国海苔巻きやチヂミ、ベトナムの春巻き……など、それぞれの故郷の味がずらりと並びました。

ここで、シュペネマン会長が改めて「茶Cha」の活動内容を紹介し、今後はさらに他のアジアコミュニティにも参加を呼びかけていきたい、との抱負を語りました。

そして、イベントはいよいよクライマックス。「茶Cha 」の人気プログラムである「椅子カキラ」の時間です。日本生まれの肋骨体操「カキラ」を指導してくださるのは、デーヤックの催し物でおなじみの菅田珠貴さん。皆の共通語であるドイツ語で動きを説明する珠貴さんに、韓国の参加者から「日本語ではどう言いますか?」という質問が飛び出し、参加者全員が「オスー」「ヒクー」と元気に声を合わせて、再び会場が一つになりました。

国を超えての交流が自然に生まれ、和気藹々とした雰囲気で進行したオープニングイベントは、参加者の皆さんに大変喜んでいただいただけでなく、デーヤックの活動をドイツの行政機関にアピールする良い機会ともなりました。

「移民・統合政策に関して難しい懸案が山積する中、今日は心温まる時間を過ごすことができました。素晴らしいイニシアチブに感謝します」——そう語るランデロ次官はじめ、来賓の皆様から、口々に「茶Cha」のこれからの活動に対する温かい声援をいただきました。(ベルリン・重松えり子)

※「茶Cha」は、毎月第二木曜日の14:00〜16:00開催。おしゃべりやゲーム、カキラ体操などを楽しむほか、生活相談にも応じています。

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