認知症への理解を深める
③「認知症と難聴」
ランセット委員会の報告(2024年)によれば、認知症の45%は14のリスク因子を除去することで回避、あるいはその進行を遅らせることができます。その中でも「難聴」は最大のリスク因子とされ、軽度認知症の人の認知症発症率は聴力が正常な人の2倍という調査結果もあります。
では、なぜ難聴が認知症を引き起こすのでしょう。一つには、難聴によるコミュニケーションの支障から会話や社会活動が減少し、うつ、無気力、社会的孤立を引き起こして認知機能の低下につながったり、「音という情報入力の減少」によって聴覚に関わる神経活動が低下し、そのような生活を続けるうちに脳が萎縮し、認知機能低下へとつながると考えられています。複数の要因がつながって結果的に認知機能を低下させるというもので、「カスケード仮説」とよばれます。また、難聴の人の脳の認知資源が日常的に「音の情報処理」にばかりに動員されてしまうため、高度の知的作業を行う脳の活動が難しくなり、その結果、神経の変性、脳の萎縮が加速するという説もあります(「認知負荷仮説」)。
難聴が認知症の発症リスクを高めるというのは、聴力の悪化を放置した場合です。加齢によって、ゆっくりと時間をかけて聞こえが悪くなっていった場合は、聴力の復活、すなわち若返りは困難です。しかし、補聴器によって難聴を補正をすれば、認知症の予防に有効とされています。難聴が疑われる場合は、まずは専門医の診察を受けましょう。
参考:https://www.resound.com/ja-jp/hearing-loss/dementia-hearingloss-jp; https://owned.jibika.or.jp/hearinglossanddementia