鍼灸のすゝめ

痺れについて

原島慈郎(はらしま・じろう)

この仕事をしていると、手や足がしびれるという訴えによく遭遇します。僕も経験してみて、こんなに嫌な感覚なのかと気づいたことから、今回はそんな「痺れ」についてまとめて

みました。「痺れ」と言ってもその症状は様々で非常に複雑です。

  • 灼熱感や痛みに近いような異常感覚を訴える人
  • 正座の後のような「ビリビリ」「ジンジン」という感じを訴える人
  • 動かしにくかったり感覚が鈍くなっているという人など・・・

まず痺れは何故起きるのか?

  1. 神経の損傷または締め付けや圧迫
  2. 血管の圧迫による循環障害
  3. 脳の問題(自律神経)

に大きく分類して説明していきます。

1. 神経の損傷または締め付けや圧迫

神経は刺激を脳に送る感覚系の神経と、脳からの指令を各器官へ送る運動系の神経に大まかに分けることが出来ます。運動系の神経に問題が起きたときは、力が入らなくなったり、運動を滑らかに行うことができなかったり等の、何らかの麻痺症状を伴います。

感覚系の神経と運動系の神経は、末梢神経では同じ神経の束を形成します。脳や脊髄神経でも非常に近い所にお互い存在します。

少し難しい説明になりましたが、要するに何が言いたいかというと、神経に問題が起きた場合は感覚系の神経のみが異常を起こすことは非常に稀で、運動神経の麻痺も一緒に起きるはずということです。

更には感覚神経に異常があれば、感覚(触っている感覚や、熱い、冷たい、痛みに対する感覚)の低下も一緒に起きます。強い運動麻痺や暑さや冷たさを全く感じないくらいの感覚異常がある方はやはりオペの適用となる場合が多いです。

僕のように手術後にはこういった症状が起きやすいことも特徴の 1 つです。

では②血管の圧迫の場合はどうでしょうか?

② 血管の圧迫による循環障害

筋肉にはたくさんの血管や神経があります。筋肉は持続的な緊張状態を強いられると、硬くなり「硬結」という状態になります。「硬結」の部位では血管が圧迫されて、血液の循環が悪くなっています。 血液の循環の低下は、あの正座と同じ状態であり、痺れを引き起こします。

また筋肉は働くことでポンプの役割を果たしているので、あまり筋肉を使わないと、体の水分やリンパ液などがそこにとどまり、いわゆる「むくみ」を形成します。 このむくみによっても、血管は圧迫されたり、滑りが悪くなったりして、やはり痺れを引き起こすと考えられます。

この「硬結」「むくみ」は鍼や整体などで比較的早く効果的に取り除くことが可能です。

「脊椎の変形」や「椎間板ヘルニア」でオペをしないといけないと諦めていた方の症状も、筋肉を調整することで改善する可能性があるということなのです!

③ 脳の問題(自律神経)

僕は日本で脳神経科に勤務していたこともあるので、多くの方が痺れで受診されていました。突然の手足の痺れ、ろれつが回らないなどの症状は脳出血や脳梗塞を疑いがあるので、直ぐに病院へ行くことをおすすめします。

そのような危険な痺れというものもありますが、経験からお伝えすると脳神経科を受診される9割以上(99% 以上)の方は MRT、CT を撮っても脳そのものには異常が出ることはありません。脳そのものに異常が出ることは稀ですが、自律神経が原因で痺れを感じる場合はそこそこあります。

それは①でお伝えした神経の場合の起こり得ない痺れのパターン「感覚異常はあるけれど、運動麻痺は無い場合」+②でお伝えした「硬結」や「むくみ」でも無い場合です。つまり、 原因が神経でも血管や筋肉でも無いけど痺れを感じるという場合は、自律神経系の乱れが考えられます。

そしてこれの原因としては一番にはストレスが挙げられます。

解決方法としては当たり前のことですが、やはり適度な運動と、バランスの良い食事、質の良い睡眠になりますので日々の生活の積み重ねが大切になります。

以上が痺れの原因と対処法ですが、すべての痺れの原因が今述べたものにあてはまる訳ではありません。①②③が複合的に起きている場合もありますし、手術や別の治療が必要な危険な痺れも存在しますので、まずは病院で検査を受けることをおすすめします。

その上で痺れでお悩みの方は 1 人で悩まずに、一度お問い合わせください。

少し長く、専門的になりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。


原島慈郎(はらしま・じろう)

日本で10年間鍼灸師として大学病院のペインクリニック科や脳神経内病院、 婦人科疾患専門の鍼灸治療院などで勤務。2022年にベルリンに移住。Heilpraktikerの勉強を始め、2025年にドイツ鍼灸師資格取得。施術の傍ら、デーヤックのニュースレターでコラム「鍼灸のすゝめ」執筆や講演活動を行う。

お問い合わせはこちらから:hari.jiro.t@gmail.com

原島慈郎